コンピューターグラフィックスとインタラクティブ技術の世界最大の国際会議「ACM SIGGRAPH」が東京国際フォーラムで2024年12月3~6日に開催されています。AICUでは X@AICUai も合わせて総力特集を実施中!
AICU media ライターのやまぐちです!今年のCG研究の最高峰がたった3時間でつかめるTechnical Papers Fast-Forward (以下TPFF)の紹介記事、後編です。後編では前編より詳細な視点で、Houdinist (=Houdini使い; Side Effects Software社が開発した3DCG制作専用のソフトウェア)で流体シミュレーションが好きな私が気になったTechnical Papersを紹介していきます。
個人的注目Technical Papers
こちらがSIGGRAPH Asia 2024公式サイトによるTPFFの情報です。
Technical Papers Fast-Forward
Particle Laden Fluid on Flow Maps (粒子が混ざった流体のフローマップ)
▶︎Particle Laden Fluid on Flow Maps
こちらは今年のTPFFのトレーラーにて注目Technical Papersにも選ばれていた研究です。この研究では、インク拡散シミュレーションを扱っています。忠実度の高いシミュレーションが、2つの粒子系を結合してシミュレーションを行う手法によって可能になったとのことです。ここではパーティクル(粒子)フローマップという、パーティクルの動きの情報を持ったフローマップシステムが使われています。既存のフローマップの技術では粘性や抗力などの散逸力の扱いに限界がありましたが、本研究はそれらの課題を克服しています。
発表は、4日目(2024年12月6日)の「Fluid Simulation」のセッションで午前10時45分から行われます。
筆頭著者はZhiqi Liさん。ジョージア工科大学の所属です。他に3人が同大学から参加している他、ダートマス大学のJinyuan Liuさんも共同執筆者です。
オイラー方程式、ナビエ・ストークス方程式、ポアソン方程式系などを解いているようですが、難しいことは抜きにして、デモ動画を見てとても興味が湧いたので1番目にピックアップしました。私自身、インクのシミュレーションはいつかやってみたいテーマなので参考になりました。「Fluid Simulation」のセッションでは他にも美しいシミュレーションがたくさん発表されているので個人的必見リストです!
なお、「Fluid Simulation」のセッションは1日目にもTechnical Communicationの枠の中で発表があります。選ばれている研究はTechnical Papersのものとは異なるので、Fluidが好きな方はこちらもチェックすることをおすすめします。
https://asia.siggraph.org/2024/session/?sess=sess280
Efficient GPU Cloth Simulation with Non-distance Barriers and Subspace Reuse (非距離バリアと部分空間再利用による効率的なGPU布シミュレーション)
▶︎Efficient GPU Cloth Simulation with Non-distance Barriers and Subspace Reuse
この研究では、衣服のシミュレーションパフォーマンスを向上させる手法が提示されています。高解像度の衣服モデルであっても、すべての三角形ポリゴンがもつれないようにし、キャラクターモデルなどに貫通しないインタラクティブなシミュレーションが実現できるとのことです。
発表は、3日目(2024年12月5日)の「Keep in Touch / No Touching」のセッションで午前9時34分から行われます。
筆頭著者はLei Lanさん。ユタ大学コンピューティング学部の研究員です。ユタ大学からは他に3人がこの研究に参加しています。また、UCLA、Institute of software、Chinese Academy of Sciences、Style3D Researchからも研究者が参加しており、合計で9人が論文執筆に関わっています。
ここから少し個人的な話ですが、私はVTuberが好きで3Dライブや「踊ってみた動画」をよく見るんですよね。そういうとき、普段Houdiniでシミュレーションを扱っている側からすると服や髪の動きが気になるわけです。せっかくなら素晴らしいデザインの衣装でもっと破綻なく動けたらさらに盛り上がりますよね。そういった課題にこの技術を活かせれば、Vtuberやバーチャルタレントたちの魅力がさらに伝わると思います。
URAvatar: Universal Relightable Gaussian Codec Avatars (URアバター:再照明可能なアバター)
▶︎URAvatar: Universal Relightable Gaussian Codec Avatars から引用
1つ目に紹介したTechnical Paperと同様に今年のTPFFのトレーラーにて注目Technical Papersに選ばれていた研究です。こちらでは、照明の情報が不明なスマートフォンでのスキャンから、フォトリアルで再照明可能な頭部アバターを作成する新しい手法を提示します。この手法で作られたアバターは、どんな環境でもリアルタイムにアニメーションし照明を当てることが可能です。
発表は、4日目(2024年12月6日)の「My Name is Carl: Gaussian Humans」のセッションで午前11時43分から行われます。
筆頭著者のJunxuan Liさんをはじめ、8人の著者全員が Meta社のReality Labs Researchの所属です。この研究には日本人のShunsuke Saitoさんが参加しています。日本語が通じないセッションが多く、質問できるか不安な気持ちがある方にとって、日本人の発表者がいるセッションは気軽に参加できるのではないでしょうか。
この研究のデモ動画を見て、スマートフォンでの撮影だけでどんな環境の光にもアバターを合わせられるところがとても興味深いと思いました。3DCGソフト上ではなく、スマホで撮影した情報だけで照明が作れるのはすごいですよね。映像のポストプロダクションの過程で役に立ちそうです。
まとめ
以上が個人的注目Technical Papersでした。皆さんが気になるものもありましたか?今年のTechnical Papersは数えた限り277本あったので、公式ページをなんとなくスクロールして止まったところを覗いてみるのも新しい発見や興味につながりそうです。また、開催当日になって慌てることのないように、準備はしっかりして参加しましょう!
SIGGRAPH Asia 2024は東京国際フォーラムにて、2024年12月3日~6日です
次回もお楽しみに!
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(執筆:やまぐち)Authored by Yamaguchi
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Originally published at https://note.com on May 14, 2024.